ナロー・ポルシェの憂鬱


ナロー・ポルシェの憂鬱

ナロー・ポルシェの憂鬱

車雑誌に「ナローポルシェ憂鬱録」という題名で連載されていた頃から、
いつ単行本になるのだろうと思っていたが、ようやく刊行されたようだ。懐かしい。
あのナローポルシェは今どうなっているのだろうと、興味津々で読み始めた。


36歳にして初めて買った外車がナローポルシェ、
運転のしにくさについては数々の逸話のあるこのマシンを
四苦八苦して乗りこなしていく筆者の様子が、克明に描かれている。
本人もいっているようにメカの話ではなくドラテクの話でもない。
あくまでドライバーズシートに乗りながら感じたことが書かれている。


時に自虐的とも思えるほど、筆者の失敗や弱み、不安な気持ち、が
正直に書かれている。そのため、感情移入しやすく、
面白く読み進めることができる。


そんな楽しい話ばかりだけでなく、ちょっと考えさせられるくだりもある。
一番、印象に残ったのは、「前があいたら踏め」という言葉にまつわるエピソードだ。
今まで「一番になろう、前に出よう」と思ったことがなかった筆者が、
ナローポルシェに出会ったことによって、
「常に前に出ていくようにしよう」と成長していったのだ。


ポルシェは、ただの機械に在らず、人をして成長させ、高めてくれるクルマである。
よく「クルマの運転はその人となりを表す」と言うが、ポルシェは、
ドライバーを成長させ、その人となり変えていくクルマなのだ。


この本の最後の章は「まったく予想外の結末へ」となっている。
最後まで読み終えれば、ポルシェというクルマが、それを所有する人にとって
どういった存在になるのかというのを、ポルシェを知らない人にも
判ってもらえるのではないかと思う。