classic 〜 1812



序曲「1812年

日本では「大序曲1812年」、「荘厳序曲1812年」、「祝典序曲1812年」とも呼ばれています。
海外でも場合により、それらの表記が用いられることがあります。
正式な名称はおいらも勉強不足ゆえ、まだはっきりとはしませんが
スコア各版には「1812」の文字があるだけです。
全音版のスコアには「荘厳序曲」との表記があります。



*作曲者:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
(英語表記:Pytor Ilyich Tchaikovsky
ロシア語表記:Пётр Ильич Чайковский 
こう書くらしいですが、文字化けがすごそうですね、化けたらスマソ)
* 作曲年月:1880年10月頃
*初演:1882年8月8日(8月20日という説もあり)
同月開催されたモスクワ産業芸術博覧会の一コンサートの中での演奏が初演。
同時に「イタリア奇想曲」も初演されています。
1899年1月15日のウィーン初演では、グスタフ・マーラー指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によって演奏されています。



* 楽器編成
注目すべきはスコアに「カノン砲」の指定があることで、これだけでもよく話題に上る曲。
とかく大編成の曲に思われがちですが、実は2管編成の拡大版だったりします。
・ピッコロ:1(第2フルート奏者持ち替え)
・フルート:2
オーボエ:2
イングリッシュホルン:1(第2オーボエ奏者持ち替え)
クラリネット:2
ファゴット:2
・ホルン:4
コルネット:2
・トランペット:2
・テナー・トロンボーン:2
・バス・トロンボーン:1
・バス・テューバ:1
ティンパニ:1
・トライアングル:1
・タンバリン:1
・小太鼓:1
・大太鼓:1
・シンバル:1
・鐘:(特に音の指定なし)
・弦楽5部
・バンダ:金管セクションによるブラス・アンサンブル人数パート任意
カノン砲(大砲):1(特に音の指定なし)


コルネット・パートは現在ではトランペットで流用することが多く、
一部のロシア及び旧ソヴィエトの演奏以外ではほとんどの場合が
トランペット2×2=合計4本で演奏される。


コルネット・パートをイタリア語の「Corno」=「ホルン」とする解釈・翻訳は間違い。
日本版のスコアにはその誤訳があるものがあります。


※旧ソヴィエト時代の演奏・録音では後半のロシア国歌部分に「政治的配慮」から
大幅な変更が加えられ、グリンカのオペラ「イワン・スサーニン」のメロディーが
無理矢理はめ込まされ編曲されています。
同様に「スラヴ行進曲」のロシア国歌部分2ヶ所でも、同様の変更がされています。


※演奏によってはバンダを使用せずに、オーケストラのメンバーのみで演奏する場合もありますが、
それでも演奏は可能で特に音的な問題はありません。
むしろバンダのアレンジやパート分けにより、原曲のイメージが損なわれる場合があります。

例:メンゲルベルクハイティンク/コンセルトヘボウ管弦楽団のフィナーレ。
トランペットに呼応してホルンが応答する部分で、バンダのトランペットも応答してしまう、など。
これはパート分けに問題があると思いますが、メンゲルベルクハイティンクがそれでもいいと許可したのでしょう。
コンセルトヘボウ管弦楽団の「慣習」の可能性もあります。


※ 指揮者によっては冒頭とフィナーレのロシア聖教歌、および旧ロシア国歌の部分に合唱団を用いる場合がありますが、これは本来作曲者の意図したものではありません。
例:
カラヤン/BPO(DG)=冒頭(ドン・コサック合唱団 別録音)

オーマンディー/フィラデルフィアOrc.(米コロムビア=CBS録音)=冒頭
 (ウエストミンスター合唱団。これは全くの別録音をあとから編集してリリースされています)


ストコフスキー/RPO(DECCA)=フィナーレ(ウェールズ・ナショナル・オペラ合唱団、ロイヤル・フィルハーモニー合唱団 男声合唱 ロシア国歌部分)

アシュケナージ/St.ペテルブルク(旧レニングラードPO.)=冒頭、フィナーレのみならず、中間部に於いても合唱団が用いられています。

・ヤルヴィ/エーテボリ交響楽団(DG)=冒頭及び後半のコラール。
この演奏は冒頭を合唱とオーケストラ両方で演奏している希な例です。


話題の「カノン砲」は、指揮者によってはグランカッサ(大太鼓)に置き換えて演奏・録音されているものもあります。
またカノン砲を使用せず電子音を使用していると思われる演奏もあります。

例:ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウOrc.=大太鼓
(最初の5発、なぜか大太鼓は演奏していません)

また「カノン砲」のパートを一切演奏しない例もあります。
例:ライナー/シカゴSO.

また、楽譜の指示をまったく無視しカノン砲を乱射、そのうえ花火まで打ち上げている演奏もあります。
例:シモノフ/RPO

カノン砲や大太鼓を使用せずに電子楽器・電子音を使用した例もあります。
例:渡辺暁雄/日本フィル+選抜 300人のオーケストラ


市販の音源のほとんどが、カノン砲を別録音でミキシングしていますが、テミルカーノフ/レニングラードPO. による、チャイコフスキー生誕150年記念コンサートでの実況録音(1990年12月1日、於サンクトペテルブルク)では、カノン砲との同時演奏を行っています。
(*注:オーケストラはホール内で演奏、カノン砲は野外で発砲されている)


なお陸上自衛隊音楽隊による吹奏楽での野外演奏でもFH-70・155mm溜弾砲「サンダーストーン」(空砲)を演奏と同時に使用したパフォーマンスがあります。
その他、陸上自衛隊では何度も「1812年」に実際に大砲を使用したパフォーマンスがあります。